人の身体・生命に関わる看護師は、単純なスキルや経験だけでなく、「どのような思いを持っているのか」が問われやすい職業ともいえるでしょう。看護師の採用選考において、志望動機は応募者の考えや経験をアピールできる重要な資料です。
この記事では、志望動機をまとめる際のポイントや注意点、応募先の特徴に合わせた12パターンの例文をまとめてご紹介します。
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志望動機をまとめる際には、いきなり内容を書き始めるのではなく、事前にポイントを整理しておくほうが効率的です。まずは、志望動機を書くうえでおさえておきたいポイントを7つに分けてご紹介します。
志望動機を書き始める前に、まずは応募先の情報をしっかりとリサーチしておくことが大切です。自身の熱意を伝えるには、「なぜその会社を志望するのか」という理由を論理的に表現する必要があります。
そのためには、経営理念や運営方針、病床数などの基本情報、力を入れている分野などを把握したうえで、応募先の実情に合った方向性で理由をまとめるのがコツです。じっくりと企業情報や経営理念をリサーチし、自身の経験や価値観とマッチしているポイントを探してみましょう。
志望動機に説得力を持たせるためには、具体的なエピソードと絡めて伝えるのが効果的です。単に自身の思いやアピールポイントを羅列するだけでは、どうしても抽象的な内容になりやすく、初対面の相手には伝わりません。
志望理由やアピールポイントは、関連するエピソードをしっかりと棚卸しして、自身の経験を交えながら記載することを心がけましょう。
人手不足にある看護業界において、長期的な活躍が見込める人材は貴重な存在となります。採用する病院側の立場を踏まえると、長く働けるという条件は、大きなアドバンテージになるといえるでしょう。
そのため、志望動機では「貴院で長期的に経験を積みたい」「院内でキャリアアップを
追求したい」といった内容を盛り込み、腰を据えて働いていくつもりでいることをアピールするのも効果的です。
志望動機は採用面接時に資料として用いられるのが一般的です。志望動機をもとに質疑応答が行われることもあるため、面接時に尋ねられても困らないように整える必要があります。
自分をアピールしようとするあまり、内容を強調し過ぎてしまったりエピソードに矛盾が生じたりすれば、かえって印象を悪化させてしまう恐れもあります。エピソードや経験は大げさに盛るのではなく、切り取り方の工夫によって際立たせるように心がけましょう。
選考を通過するためには、読みやすい文章を心がけて志望動機をまとめることも大切です。読み手の目線に立てば、「起承転結の構成を守る」「一文はできるだけ短くまとめる」「文のねじれに気をつける」といった基本的なポイントを押さえておくことが大事だといえます。
志望動機をまとめたら、一度時間を置いて自分で確認したり、知人に見てもらったりして読みにくい箇所がないかチェックしてみるとよいでしょう。
記入欄の大きさにもよりますが、志望動機は長すぎず短すぎない範囲に収め、300字程度でまとめるのがポイントです。あまりに空白が多ければ意欲が低いと思われてしまいますが、多く書き過ぎると読みやすさが失われ、かえってアピールポイントが伝わりにくくなってしまうでしょう。
300字を大幅に超えてしまう場合は、優先度の低い箇所を削りながら推敲を重ねることが大切です。
志望動機では不平や不満といったネガティブな内容は避け、前向きな思いをアピールすることが大切です。たとえ前職で納得のいかない経験をしていても、志望動機ではむやみに触れず、未来に活かせるような経験を掘り下げましょう。
また、自身のアピールポイントについても、あえてマイナス要素を記載する必要はありません。たとえ自身の良い点を述べる内容であっても、「人前で話すのは苦手ですが」のような前置きは避けるほうが無難です。
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志望動機を書く際には、状況に合った文例を参考にしながらまとめるとスムーズです。ここでは、看護師を志望するケースを12パターン取り上げ、それぞれの志望動機について例文をご紹介します。
まずは、慢性期病棟から急性期病棟への転職を目指す場合を想定して、志望動機の例文を見ていきましょう。
私が貴院を志望した理由は、「地域医療を支える」という理念に強く共感したからです。
私は看護学校を卒業してから、慢性期病棟で3年間勤務しました。患者様の在宅復帰に向け、看護ケアやリハビリ支援に従事する日々は、確かなやりがいと経験を与えてくれました。
しかし、現在の年齢と今後のキャリアプランを踏まえて、次第に「体力のあるうちに医療現場の最前線で仕事の質を高めたい」と考えるようになりました。
貴院は中核病院として地域の急性期医療を幅広く担っており、重症度の高い患者様も多く受け入れていらっしゃいます。多くの症例を通じて急性期ケアを学び、プロフェッショナルとして貢献できる認定看護師を目指したいと考えております。
急性期病院の看護師は、命の危険がある患者の悪化を防ぎ、回復をサポートするのが主な役割です。予断を許さない状況の患者を受け入れ、多種多様な処置が必要になることから、看護師には多くの知識と経験、臨機応変な判断能力が求められます。
また、緊張感の高い状況が続くことから、ストレス耐性や体力も重要な資質です。それだけに、「どのような経緯でハードな環境を目指すのか」を明確に記載することが大切です。
続いて、新卒から中小規模の総合病院での就職を目指す場合の志望動機について、例文を見ていきましょう。
私は貴院の「地域の一員としてすべての患者さんに寄り添う医療を」という病院理念に共感し、看護師としての採用を希望しております。
私が看護師を目指したきっかけは、中学生の頃に祖父をガンで亡くしたことにあります。看護師の方が祖父だけでなく、不安に陥る私たち家族まで温かくケアしてくださり、その姿にとても励まされました。
この経験から、私は患者さまとその家族の心に寄り添える看護師として、地域に貢献したいと考えるようになりました。地域の方々を幅広く受け入れている貴院で学び、多くの方に信頼される看護師として成長していきたいです。
総合病院は幅広くさまざまな科のスキルを学べるのが特徴です。ただし、必ずしも希望の科に配属されるとは限らないため、志望動機では細かなキャリアの希望などよりも、「看護師としての理想像」を具体的に表現していくとよいでしょう。
続いて、新卒から慢性期・療養型の病院を目指す場合の志望動機について、例文をご紹介します。
私は患者さんの心に寄り添える看護師として働きたいと思い、貴院を志望しております。
貴院へ病院見学に訪れた際、自身の病気や障害に向き合いながら、前向きに過ごす患者さんたちの姿が強く印象に残りました。そして、1人の患者さんにじっくりと向き合い、身体的・精神的・社会的な側面からサポートする看護師の方々に憧れの念を抱きました。
高齢化社会にあって、慢性期医療はますます重要な役割を担うと考えております。貴院で患者さまに寄り添える看護を学び、地域に貢献できる看護師として成長していく所存です。
慢性期医療では、1人ひとりの患者と長期的なスタンスで向き合うのが特徴です。志望動機では、慢性期ならではのやりがいや役割について触れ、どのように自身の価値観・経験と結びついているのかを検討しながらまとめるとよいでしょう。
次に、総合病院から専門病院への転職を目指すケースについて、志望動機の例文を紹介します。
私が貴院を志望した理由は、「個を尊重する看護」という理念に共感したからです。
私は看護学校を卒業後、総合病院の内科病棟に5年間勤務しました。前職では主にガンの患者さまを担当しており、セルフケア支援や在宅支援、慢性期看護などを幅広く学びました。
5年の経験を通じて、化学療法に関するスキルをさらに深めていきたいと考えるようになり、専門病院として知られる貴院でのキャリア形成を志望するに至りました。貴院では「個を尊重する看護」が大切にされており、患者さまお1人おひとりの段階に合わせた支援を行っている点に魅力を感じています。
貴院で経験を積みながら、ガン看護のプロフェッショナルとしてスキルと人格を磨いていきたいと考えております。
専門病院を目指すうえでは、やはり扱われている専門分野に魅力を感じた理由を明確に述べる必要があります。また、同じ分野であっても病院ごとに異なる特徴があるため、応募先ならではの特色に触れ、自身の志望理由と結びつけるのがポイントです。
次に、新卒から回復期・リハビリテーション病院での採用を目指す場合について、志望動機の例文を見ていきましょう。
私は回復期における看護のスキルを磨き、患者さま1人ひとりに合わせたサポートが行える看護師を目指して貴院を志望しました。
私が看護師を目指したのは、学生時代に打ち込んでいたアイスホッケーで大けがを負い、リハビリテーション病棟に入院したことがきっかけです。再び競技に戻れるかどうかがわからず、落ち込む私にそっと寄り添ってくださったのが看護師の方々でした。専門的なサポートはもちろん、何気ない声かけや付き添いに何度も心を救われ、在学中に復帰を果たせたことはかけがえのない経験です。
退院後の生活も含めた包括的な支援を行う貴院で、看護師として貢献していきたいと考えています。
回復期・リハビリテーション病院は、患者の回復や自立、社会復帰に向けたサポートを行うのが主な役割です。志望動機では、回復期ならではの仕事の特徴をしっかりと踏まえ、自身の経験や考えとマッチさせていくことが大切です。
続いて、総合病院からクリニック・外来への転職を希望する際の志望動機について、例文をご紹介します。
私は貴院が掲げる「女性のための安心できる地域医療」という考えに共感し、志望いたしました。
前職では総合病院の産科病棟で、看護師として8年間勤務いたしました。さまざまな悩みを抱える妊産婦と関わるなかで、出産後も含めた包括的なケアの重要性を知り、専門的なスキルを身につけたいと考えるようになりました。
この度、産後ケアにも力を入れておられる貴院で、妊産婦やその家族を支える看護に貢献したいと考え、志望いたしました。外来の勤務経験はありませんが、総合病院で得られた幅広い業務経験は、チームケアを行う現場で必ず役に立つと考えております。
貴院の理念に沿い、産後の女性が安心して子育てに向き合えるような看護に貢献させていただきたいと思います。
クリニック・外来では、病院ごとの細かな特徴にしっかりと焦点を当てることが大切です。また、外来の経験がない方も、自身の経験と照らし合わせて活かせるポイントを探ってみるとよいでしょう。
老人ホームにはさまざまな種類があり、それぞれ仕組みや役割は異なります。ここでは、有料老人ホームの採用を目指す際の志望動機について、例文を見ていきましょう。
私が貴施設を志望した理由は、利用者1人ひとりの生活習慣や考え方に合わせた個別ケアに魅力を感じているためです。利用者さまによって介護に求める要素が異なるのは自然であり、細かなニーズに合わせて柔軟にカスタマイズできる個別ケアは、身体的にも精神的にも理想的な環境整備につながると考えています。
また、貴施設では胃ろうや尿道カテーテルといった医療的処置が必要な方も積極的に受けて入れており、看護師として貢献しがいがあると感じております。
前職では、リハビリテーション施設で回復期にある患者さまに対するケアに従事してきました。日ごろから丁寧なコミュニケーションを心がけ、些細な変化も見逃さない細やかな視点が私の持ち味だと考えています。
前職の経験を活かし、貴施設で1人でも多くの利用者さまに喜んでいただくよう貢献していく所存です。
民間施設である有料老人ホームでは、施設ごとに特色が異なる傾向にあるため、まずは応募先の情報を細かくチェックすることが大切です。施設での役割を踏まえて、前職や学生時代での経験をどのように活かすべきかを考えていくとよいでしょう。
続いて、新卒から介護老人保健施設を目指すケースについて、志望動機の例文をご紹介します。
私は貴施設が「在宅復帰率の高い、強化型の施設」であるという点に魅力を感じ、志望しました。
貴施設は自宅から近いこともあり、私が高校生のころに祖母がお世話になりました。足を骨折して落ち込む祖母の姿を見て心配をしていましたが、看護師の方々の支えもあり、すぐに前向きに在宅復帰を目指すようになりました。想像以上に早く回復し、再び歩けるようになった祖母を見てとても感動したことを覚えています。
看護学生になってからも、この経験は私の進路決定に大きな影響を与えました。貴施設でお世話になった先輩方のように、私も看護師として利用者さまの心に寄り添い、前向きな復帰を支援していきたいと志望しています。
貴施設は強化型の施設としてリハビリに重点を置いており、在宅復帰率も高く、高度なケアやサポートを実践できる場だと感じています。原点になった出来事を忘れず、看護師として貴施設に貢献していきたいと考えております。
介護老人保健施設は在宅復帰を目指す点に特徴があり、看護師は医療的ケアだけでなくリハビリサポートや介護などにも関わります。そのため、どうして介護の分野に興味を持ったのか、理由を明記するのがポイントです。
特に新卒者はファーストキャリアとして介護分野を選んだ理由が明示されているほうが、志望の説得力が増すでしょう。
続いて、特別養護老人ホームでの採用を目指す際の志望動機について、例文を見ていきましょう。
私が貴施設を志望する理由は、医療依存度の高い利用者さまの受け入れも積極的に行っておられる点に、確かな社会的使命感を見出したためです。また、「利用者さまお1人おひとりへの尊敬と敬意を大切にし、生きがいを持って暮らせる介護サービスの提供」という理念にも強く共感しております。
前職では、総合病院の緩和ケア病棟に看護師として5年間勤務しました。終末期の看護に携わるなかで、より専門的な看取りのスキルと経験を身につけたいと考えるようになり、貴施設を志望しました。
病院勤務を通じて身についた強みは、どんな状況でも慌てずに対応できる判断力と、多くの症例に対応できる看護のノウハウです。今後はさらに経験とスキルを伸ばし、貴施設で看護師としての力を存分に発揮したいと考えています。
特別養護老人ホームでは、特に要介護度の高い利用者の受け入れを行うのが特徴です。自身の経験やエピソードを踏まえ、なぜ特別養護老人ホームを選んだのかを客観的に説明することが大切です。
次に、新卒から訪問看護ステーションでの採用を目指す場合の志望動機について、例文をご紹介します。
私は貴院が掲げる「心に寄り添った訪問看護」という理念に共感し、志望いたしました。
私は看護学生として勉学に励むなかで、地域医療の役割と重要性に関心を持つようになりました。入学のために初めて上京したことで、自らが生まれ育った地域の魅力に気づき、地元に貢献できる人材になりたいと考えるようになったのです。
そして、地域で暮らす人々になくてはならない身近な存在として、訪問看護の分野を目指すようになりました。貴施設ではご高齢の方だけでなく、小児から特定疾患などの方も含め、幅広い利用者さまのケアが行われています。
療養中も「安心できる自宅で過ごしたい」という希望は、誰もが持つ自然な感情です。そうした利用者さまの気持ちに寄り添い、お1人おひとりに丁寧に関われる貴施設での看護に強い魅力を感じ、志望いたしました。
まずは、訪問看護に携わりたいと感じた素直な理由を言葉にして伝えることが大切です。そのうえで、応募先の施設で何がしたいのかを明記することで、志望度や熱意が伝わりやすくなるでしょう。
続いて、病棟勤務から訪問診療クリニックへの転職を志すケースについて、志望動機の例文を見ていきましょう。
私は貴院が掲げる「住み慣れた家で暮らし続けられる医療の提供」という理念に共感し、志望しました。
私は急性期病院の外科病棟で、5年間看護師として従事してきました。緊急性の高い現場には確かなやりがいを感じており、幅広い看護のスキルと経験を身につけさせていただいたと実感しております。
しかし、どうしても患者さまと向き合える期間は短く、より長期的な視点でお1人おひとりをサポートできる看護を経験したいと考えるようになりました。貴院は患者さまのみならず、ご家族も含めたサポートを大切にされています。
どこまでも患者さまの暮らしを大切にする貴院の理念に共感し、このたび志望いたしました。在宅医療は未経験の分野ですが、病棟勤務で培った看護スキルを活かし、いち早く戦力として貢献してまいる所存です。
訪問診療クリニックの場合も、まずは在宅医療に関する興味や考えを丁寧に表現することが大切です。また、クリニックがどのような理念で運営されているのかもリサーチし、自身の経験・価値観と合致するポイントを探りましょう。
次に、健診センターの看護師に応募する際の志望動機について、例文をご紹介します。
私は貴センターが「病気を予防する医療」に力を入れている姿勢に関心を抱き、志望しました。
私は総合病院の内科病棟に、看護師として5年間勤務しました。前職では生活習慣病などの慢性疾患で受診される方も多く、生活指導にも力を入れてきました。また、何気ない予兆から重篤な病気が見つかり、一命をとりとめるという経験も少なくありませんでした。
こうした業務経験のなかで、次第に予防医学の分野に興味を持つようになり、このたび貴センターに応募いたしました。貴センターでは施設内だけでなく、企業への出張健診や巡回健診も実施されており、忙しい社会人の実情に合わせたサポート体制に魅力を感じています。
内科業務で培ったスキルを貴センターで活かしながら、予防医療に貢献していきたいと考えております。
健診センターの役割は予防医学にあるため、自身の考えや価値観と絡めながら、どのような経緯で関心を持ったのかをまとめるのがポイントです。また、センターの運営方針や力を入れているポイントをリサーチし、志望動機との整合性をチェックすることも大切です。
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最後に、志望動機をまとめる際の注意点を確認しておきましょう。
志望動機を書くにあたって、さまざまな例文を参考にするのは効果的です。しかし、細かな表現や言い回しはそのまま転用するのではなく、自分の言葉に置き換えて練り直すことが大切です。
たとえば、志望理由やアピールポイントについては、具体的なエピソードを盛り込むと自分らしさが反映されやすくなります。面接時には志望動機を参考資料にして質疑応答が行われることもあるため、自分の言葉で説明できるようにじっくりと検討しましょう。
志望動機は働くことへの意欲を見るものであるため、受け身の印象を抱かせないように注意する必要があります。特に中途採用では、これまでの経験を積んでいることが前提となるため、「一から学びたい」といった表現は避けるのが無難です。
自らの経験や能力などを踏まえて、具体的にどのような形で貢献できるのかを整理しましょう。
看護師の仕事内容は、所属する病院や科、施設によってさまざまです。まずは応募先がどのような特徴を持っているのかを丁寧に調べ、実際に働くことをイメージしながら志望動機をまとめていきましょう。
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