法務の自己PRの書き方|基本的なポイントと例文を解説

法務の仕事に応募するときは、応募書類に記載する自己PRの書き方について、基本的なポイントを押さえておく必要があります。今まで培ってきたスキルや経験をうまくアピールすることで、採用担当者の目を引く内容に仕上げる必要があるからです。
この記事では、自己PRを作成するときに押さえておきたい点や記入例を詳しく解説します。
法務の自己PRで書くべき内容

自己PRとして書くべき内容は、記入スペースに限りがあるので短くまとめる必要があります。具体的な内容として、次のようなものが挙げられます。
法務の自己PRで書くべき主な内容
・契約法務の経験
・訴訟対応の経験
・商事法務の経験
・知財法務の経験
・業務効率化につながった経験
それぞれのポイントについて、解説します。
契約法務の経験
契約法務は、法務担当のメイン業務にあたる重要な経験です。法務の経験を伝えるのであれば、契約書の作成数や審査数の実績は有力なアピール材料といえます。
処理する契約書の種類や件数は、業界によって違ってきます。どのような書類を何件対応してきたのか、扱った経験のある契約書の種類と数字を通じて、具体的に伝えるとよいでしょう。
一般的に、契約書の審査は月間40件だと処理数が多め、20件だと処理数は少なめと判断される傾向にあります。
訴訟対応の経験
契約法務に並び、法務担当者のメイン業務とされるのが訴訟対応です。今までに訴訟対応やクレーム対応を行ってきた経験があれば、自身の実績として積極的にアピールしましょう。
特に、現代ではSNSや口コミサイトにより、不特定多数のユーザーが不特定多数のユーザーに向けて自由に情報発信が行えます。企業に対する不当なクレームを放置すれば、評判や信用を大きく損なうリスクがあるため、適切な処理を行う重要性が高まっています。
今までに法的な観点からクレーム処理を行った経験があれば、企業の価値を守れる人材として重宝される可能性が高いです。
商事法務の経験
商事法務とは、主に株主総会や取締役会の運営を担当する業務です。株主総会や取締役会は、一定条件に該当する会社は開催が義務づけられている手続きです。
一方で、商事法務には会社法をはじめとする専門的な知識が求められることから、経験していれば強力なアピールポイントとなります。契約法務と比べても、経験者は少ない傾向にあるので、他の応募者との差別化を図る意味でも効果的です。
自己PRで商事法務の経験をアピールするには、自身がどのような提案を行ったのか、どのような利益をもたらしたのかを客観的に示すとよいでしょう。
知財法務の経験
社内に開発部門を持つメーカーでは、知財法務も欠かせない業務となります。知財法務に携わるためには、知的財産権に関する専門性が問われるため、業務経験は高く評価される可能性があります。
また、一般法務と知財法務は協働する場面も多いため、知財の経験は一般法務として働く際にも役立つでしょう。一口に知財といっても、特許権から著作権まで幅広い業務が存在するため、自己PRではどのような分野が得意なのか、具体的なエピソードも交えて書くのがポイントです。
業務効率化につながった経験
法務の仕事では、書類を扱う業務が多いため、どうしても手続きが煩雑になりやすい面があります。チームで動く場面も少なくなく、業務フローを改善できる人材は重宝されやすいといえるでしょう。
業務効率化の基本的な考え方や進め方は、どのような業種でも同じように求められるスキルです。そのため、デジタル化や省力化、社内マニュアルの作成で業務効率化につながった経験があれば、積極的にアピールしていくのが効果的です。
自己PRでは、どのような課題があり、どのようなアプローチによって解決したのかを具体的に記載することで、説得力を持たせられるでしょう。
【分野別】法務の自己PRの例文

法務の仕事に応募するために自己PRの文章を作成するときは、実際の記入例を参考にしてみるとスムーズに進められます。ここでは、5つの記入例を見ていきましょう。
契約法務の自己PRの例文
まずは、契約法務の経験を中心にまとめる際の例文をご紹介します。
自己PRの例文
前職では法務担当として、契約書の作成・審査業務に3年間従事しました。月間平均〇件の審査業務を通じて、契約書の字面でだけでなく、目的や背景についても深くくみ取れるようになりました。スムーズな取引を行うために、単にリスクを指摘するだけではなく、状況に応じた代替案も提案するように心がけています。
私の強みは、主体的に情報収集を重ねる好奇心の強さにあります。
契約書の作成・審査は予防法務の観点が強いものの、自社およびクライアントの課題解決という視点に立てば、市場の動きや利益構造の主体的な理解も欠かせません。
貴社の業務においても、前職での経験と綿密な情報収集力を活かし、チームの一員として貢献していく所存です。
契約法務の自己PRでは、どれくらいの案件量をこなしていたのかを数字で端的に示すのが基本です。そのうえで、自身の強みや価値観をどのように伸ばしてきたのか、具体的なエピソードを交えて記載するとよいでしょう。
訴訟対応の自己PRの例文
続いて、訴訟対応の経験をアピールする際の例文をご紹介します。
自己PRの例文
私の強みは、コミュニケーション力と調整力にあります。
前職では大手メーカーの法務担当として、3年間で〇件の訴訟対応業務に従事してきました。状況確認のため、社内の役員や現場の従業員へのヒアリングを行うことも多く、専門用語に頼らずに事実を共有するコミュニケーションスキルが身につきました。
〇〇という企画では、クライアントからの□□に関する訴訟により、1ヶ月にわたって進行がストップするという事態に陥りました。その際、事業部の責任者へ丁寧に状況説明を行い、対応とスケジュールの最適化を図れたことで、△△の損失を未然に予防できました。
前職での経験と培ったスキルを活かし、貴社の業務に全力であたっていく所存です。
訴訟対応の経験をPRするのであれば、「どのような案件に対して」「どのように対処し」「どのような結果(不利益の回避/利益の獲得)」につながったのかを明示するのが効果的です。自身の強みと絡めて表現できれば、有力な自己PRになるでしょう。
商事法務の自己PRの例文
続いて、商事法務の経験をもとに自己PRを作成するときの例文をご紹介します。
自己PRの例文
前職では、組織法務として社内の機関運営に5年間携わりました。株主総会や取締役会の招集手続きから、議事録の作成・保管、株式の発行・分割にともなう関連業務をまで、幅広い業務を担当してきました。法令遵守によるリスク回避を第一としながら、総会における想定問答の作成、情報の透明化にも積極的に携わりました。
これらの業務経験を通じ、法的な知識に加えて、分かりやすい資料作りを行うプレゼン力とコミュニケーションスキルが身についたと考えております。
私の経験とスキルは、上場を視野に入れる貴社においても役立てられるものと確信しています。
商事法務の経験は、応募先の企業でどのように活かせるのかをイメージしたうえでまとめるのがコツです。専門的な経験やスキルだからこそ、自身の強みとしてどのように活用するのかを具体化しておきましょう。
知財法務の自己PRの例文
続いて、知財法務の経験をアピールする際の例文を見ていきましょう。
自己PRの例文
前職では○○業界でトップシェアを誇るメーカーで、知財法務として特許出願業務を担当しました。技術者への細やかなヒアリングと、業界知識への深い理解を武器とし、□年間で××件の発明を発掘し、権利化へと結びつけました。
私の強みは、徹底的な事前準備とリサーチ力にあります。業務では技術者の発明を理解するため、最新の技術動向や市況をくまなくリサーチし、明細書の適切な作成に結びつけてきました。
前職での経験と培ったスキルをもとに、貴社での知財活動体制の構築に貢献していく所存です。
知財法務では、数字で表現できる実績はできるだけ具体化してアピールすると効果的です。特に特許権や著作権に関する分野では、携わってきた案件数によって経験量を客観的に伝えることができます。
デジタル法務の自己PRの例文
産業全体におけるDXの推進により、近年ではデジタル法務に強い人材の需要が高まっています。最後に、デジタル法務の経験をベースにした自己PRの例文を見ていきましょう。
自己PRの例文
私の強みは、前前職でIT、前職で法務と、異なる分野での業務を経験してきた点にあります。
前職ではITに強い法務担当として入社し、5年間にわたってデジタル法務に従事しました。入社直後のコロナ禍では、電子署名・電子契約導入の責任者を務め、法的リスクのチェックから提携先の選定、コスト管理までを幅広く担当しました。従来と比べ、紙の使用量を年間〇%削減することに成功し、契約にともなう業務フローも大幅に改善しました。
その後はAIの活用を積極的に推進し、データの管理や法的リスクの抽出に役立てるフローを構築しました。
前職での経験をもとに、デジタル法務のスペシャリストとしてAI分野での専門性を高め、貴社の運営に貢献していきたいと考えています。
デジタル法務における経験は、具体的にどのような導入・改善を行ったのか、その結果どのようにプラスの影響が生まれたのかをアピールするとよいでしょう。ただし、応募先によっては今後デジタル分野に力を入れるというケースもあるため、専門用語の使用は控え、分かりやすくまとめるのがコツです。
法務の自己PRを書くときのポイント

法務の自己PRを書くときのポイントとして、主に次の3つの点が挙げられます。
法務の自己PRを書くときの3つのポイント
・法律の専門分野や問題解決能力について書く
・数値化できる実績を記載して説得力を持たせる
・企業のリスク管理と予防法務の経験があれば書く
各ポイントについて解説します。
法律の専門分野や問題解決能力について書く
今回ご紹介したように、法務には多様な業務が存在しているため、どの分野を専門としてきたのかを明記するのがポイントです。たとえば、契約業務を経験してきたのであれば、「私は特に契約法分野に精通しており、○○に関する契約書の作成・審査業務を3年間で◇件担当してきました」のように、専門分野を分かりやすく表現しましょう。
また、訴訟対応やデジタル法務においては、具体的なエピソードを通じて問題解決能力をアピールするのが効果的です。「○○に関する訴訟において、□□という証拠を収集・分析し、会社に有利な和解を成立させました」のように、可能な範囲で強みを具体化することが大切です。
数値化できる実績を記載して説得力を持たせる
自己PRの例文でも触れたように、経験や実績として数値化できるものは、できるだけ数字で表現するのが望ましいです。たとえば、業務効率化やデジタル法務に関する経験であれば、「○○が□%改善した」「離職率が〇%改善された」といったことも有効な実績となります。
また、数値化が難しい業務経験についても、できるだけ読み手の視点に立って簡潔な表現を用いることが大切です。
企業のリスク管理と予防法務の経験があれば書く
リスク管理やコンプライアンス体制構築といった予防法務の経験も、法務の自己PRとして有効な武器になります。リスク管理では、企業が扱う商品・サービスの特性を踏まえた記述を行うことで、説得力が高まります。
「○○に関する新規事業立ち上げにおいて、□□の潜在的なリスクを洗い出し、契約書や社内規定の整備を行いました」のように、直面していたリスクの種類と対処法をセットで表現するとよいでしょう。また、法務体制の構築については、コンプライアンスへの意識をどのように組織へ浸透させていったのかを記述するのがコツです。
「全従業員を対象に○○の研修を実施し、動画を用いた資料作成を行い、法的リスクに対する意識向上に貢献しました」といったように、自身が貢献したエピソードをピックアップするとよいでしょう。
自己PRの基本的な書き方を押さえて、法務の仕事に応募しよう

自己PRは今まで培ってきたスキルや経験から、自分の強みや人柄をアピールするために作成するものです。基本的な書き方があるので、まずは盛り込むべき内容やポイントを押さえておくことが重要になります。
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