履歴書の扶養家族欄は、配偶者や子どもの情報を記載します。非常に小さな欄ではあるものの、扶養家族がいる場合「どのような記載方法が正しいのだろう」と気になる方もいるでしょう。本記事では、転職活動において、正しい履歴書作成を目指す方向けに、パターン別の書き方を解説します。
履歴書における扶養家族は、応募者本人の収入で養っている家族を指します。条件はありますが、一般的に該当するのは、配偶者や子ども、父母や祖父母、兄弟姉妹です。ここでは扶養家族の定義や該当条件を紹介します。
社会保険法での扶養家族の定義によると、被保険者の収入によって生計が維持されている者を被扶養者としています。具体的には下記のとおりです。なお、税法では扶養控除を受けるため、納税者が養っている家族を扶養親族と定義しています。
社会保険法 | 税法 |
・被保険者以外の健康保険組合に加入していない ・年収130万円未満かつ被保険者の年収の2分の1未満 ・3親等以内の同居親族もしくは扶養可能な別居親族 ・75歳未満の父母や祖父母 ・被保険者と生計を共にしている | ・12月31日時点の年齢が16歳以上 ・青色申告者から給与を受け取っていない ・白色申告者の事業専従者ではない ・年間の合計所得金額が48万円以下 ・配偶者以外の親族 ※6親等内の血族または3親等内の姻族 ・納税者と生計を共にしている |
社会保険法において、被扶養者になるには以下の条件をすべて満たす必要があります。
・ほかの健康保険組合で被保険者となっていない
・収入額が被扶養者としての条件を満たしている
・三親等内の親族で同居しており、別居していても扶養可能な親族である
・被保険者の収入で生活を送っている
自身や家族に該当する条件を確認しましょう。
扶養家族欄には、被扶養者の人数を記載します。配偶者の記載が別欄にある場合は、配偶者を除いた数を記載します。
履歴書には、社会保険法上の被扶養者の人数を記載するため、該当しない「75歳以上」の家族がいる場合は、人数として数えないよう注意しましょう。
次に「配偶者」の定義を確認しましょう。
社会保険法 | 税法 |
・民法の定めに則った配偶者である ・事実婚や内縁関係も該当する | ・民法の定めに則った配偶者である ・事実婚や内縁関係は該当しない |
内縁関係や事実婚は、税法上婚姻関係とは認められていませんが、社会保険法では認められており履歴書上の配偶者に記載可能です。婚姻関係がある、または事実婚や内縁関係の相手がいる場合は、履歴書の配偶者欄で「有」に「〇」をつけましょう。
例
配偶者 ※ 有 無 |
ここからは実際の記入例を元に扶養家族の記載方法を解説します。
独身の場合は下記の通り記載します。
独身で、同居家族や仕送りを行う親族がいない場合、扶養家族は0人です。
配偶者は「無」に◯をつけ、配偶者の扶養義務も「無」に◯を記入します。
独身の場合でも、扶養家族の適用範囲である親族と同居している場合や、別居している親族に仕送りをして養っている場合は、扶養家族の人数に変更が生じます。
自分+配偶者(専業主婦・夫)の場合は下記の通り記載します。
自身が扶養者で、配偶者が年収130万円未満ならは、扶養家族は0人とします。
配偶者「有」の欄に◯を記入し、配偶者の扶養義務「有」に◯をつけましょう。通常の履歴書では、扶養家族欄に「配偶者を除く」と書いてあるため、扶養家族数欄は0人になります。
自分以外に働いていないパートナーと子どもがいる場合の記載方法は下記のとおりです。
自身と専業主婦・夫の場合には、扶養家族欄には配偶者を除いた人数を記入するため1人、配偶者は「有」に◯を記入し、配偶者の扶養義務も「有」に◯をつけます。配偶者が年収130万円未満でも、子どもに年間130万円以上の所得があるのであれば扶養家族欄は0人、配偶者は「有」に◯を記入し、配偶者の扶養義務も「有」に◯をつけます。
子どもの年収が130万円以上か未満かによって、扶養家族欄の人数が変わるため注意してください。
夫婦双方が社会保険に加入しながら働いており、かつ子どもがいない場合は下記の記載方法です。
自身が扶養者で配偶者が年収130万円以上の場合は、扶養家族は0人、配偶者は「有」に◯を記入し、配偶者の扶養義務は「無」に◯をつけます。
夫婦が共働きかつ子どもがいる場合は下記の記載方法です。
自身が扶養者で配偶者が年収130万円以上、子どもの収入がない場合は、扶養家族は1人、配偶者は「有」に◯をつけ、配偶者の扶養義務は「無」に◯を記入します。年収130万円以上の子どもがいる場合、扶養家族は0人です。この場合も、子どもが受けとる年収額によって扶養家族欄の人数が変わるため注意しましょう。
別居の親族に仕送りする場合は下記の通り記載します。
自身が扶養者で、年収130万円未満の配偶者がいる、さらに扶養者の母が75歳未満で扶養者の仕送りによって生計を立てているケースを想定してみます。扶養家族は配偶者を含まないため、扶養者の母の1人、配偶者は「有」に◯をつけ、配偶者の扶養義務は「有」に◯を記入します。
別居しているのが、配偶者または子ども、兄弟や姉妹、両親などの直系親族のケースを想定してみます。この場合、扶養者が継続的に仕送りして親族を養っており、かつ被扶養者の収入が仕送り額より少ないことが扶養家族と見なされる条件になります。
学生自身の場合は下記の通り記載します。
自身が独身で、同居や仕送りをする親族がいない場合は、扶養家族は0人、配偶者は「無」に◯をつけ、配偶者の扶養義務も「無」に◯を記入します。大学生や高校生などの学生でも、履歴書に扶養家族欄があれば記入しなければなりません。扶養家族に該当する親族と同居している、もしくは仕送りをして養っている別居中の家族がいる場合は、扶養家族の人数が変動します。
履歴書に扶養家族を記入する理由としては、入社後の社会保険手続きで必要な情報であるというものが挙げられます。企業は、従業員とその扶養家族のために、社会保険に加入する必要があります。扶養家族の数によって加入する保険の種類や保険料が変わるため、事前の把握が欠かせません。間違った情報を記入したり未記入のままだったりすると手続きが遅れてしまう可能性もあります。
なお、税制面でも企業は家族の扶養状態を知る必要があります。扶養家族の人数によって所得税の控除額も変わるためです。。また、企業によっては住宅手当や家族手当など、扶養家族がいる従業員にのみ提供する福利厚生もあるでしょう。
扶養家族がいる場合、介護や育児など、家族の事情によっては勤務時間に制限が生じる可能性もあります。あらかじめ条件を把握しておけば、企業は適切な人材配置や業務分担が可能です。
履歴書の扶養家族や配偶者記入欄の記載を間違えると、入社後の手続きでトラブルになる可能性があります。また、面接で家族について聞かれた際に齟齬が発生して応答に困ることもあるでしょう。今回紹介した記入方法を参考に、細部まで正しい情報を記載した履歴書を作成し、内定を目指しましょう。
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